元自衛官の憂い The third
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| 02131356 | 浅瀬に徒波 |
またやっちゃいました! 北鮮のロケット発射に、日本が騒ぎ出すのが恒例行事となりました。
それを批判しようとは思いませんが、北鮮のミサイルに、これしか手立てが無いという情けなさは誰も口にさえしません。北鮮のミサイル発射に恒例行事となったのは筆者の批判も同じかもしれません。
中谷防衛相は、「いかなる事態にも対応できるよう万全の体制を整えてきたが、今般の発表を受け、自衛隊のイージス艦、PAC3部隊などに対し、所要の態勢を取らせるべく、弾道ミサイルなどの破壊命令を発出した」と記者団に語りました。河野統幕長も「いかなる事態にも対応できるよう、警戒監視を含め国民の安心と安全確保に万全を期す」と語り、国民は心強い限りでしょう。
お決まりのコメントですが、自衛隊反対を訴える沖縄などの首長さんがこうした事態になぜか「理解を示す」という不思議な図式も相変わらずです。安保法制で声高らかに訴えた学生諸君! せっかくですから北鮮に渡ってロケット発射を思い止まらせるくらいしてもいいのではないですか?
まずはミサイルについてのおさらいです。
弾道ミサイルと衛星打ち上げロケットは、全く同じものです。先日、日本人宇宙飛行士大西拓哉さんがニュースに出ていましたが、大西さんはロシアの「ソユーズ」で宇宙へと向かいます。ソユーズは元々は宇宙船と核弾頭を積み替えることが可能でした。ロケット=ミサイルということから、自国技術で衛星を打ち上げられる国は事実上、ICBM技術を持つ国と見なされます。当然、日本も例外ではありません。原発が多数あり、ロケット技術もある日本ですから、世界は表立っては言いませんが、「いつ核武装するのか?」と警戒している国も無いではないのです。
それから「破壊措置命令」ですが、これは北鮮が打ち上げたロケット=ミサイルを何が何でも撃墜するというものではありません。制御不能となった場合、部品の不時落下などが確認された場合にのみ発動されるものです。
本当に国民の生命・財産を守るというのであれば、賢明な為政者なら現実を告知し、国民により良い選択を求めるべきです。いたずらにそれを避け、都合の良いことばかり並べ立て、見せかけだけの行為は詐欺と同じです。
北鮮のミサイル発射で何事も起きなければ、自衛隊は“何もしない”ということになります。
万全の対応を進めているかに見えますが、ミサイル防衛は非常に技術的に難しいものがあります。アメリカの早期警戒衛星がミサイル発射を探知し、この情報からミサイルの追尾が開始されます。イージス艦のレーダー、地上設置通称ガメラレーダーとが追尾に失敗すれば即アウト! 追尾できても、事前に展開している場所から遠く離れていればこれも即アウト!です。迎撃用のミサイルにも射程がありますので、サッカーのゴールキーパーのような存在です。高身長の手足の長い選手が求められているのと同じことです。シュートに対し瞬時に判断できる動体視力、反射神経、瞬発力などがミサイル防衛には求められているのです。しかし、現実にはゴールを100%守り切ることができるキーパーはこの世には存在しないようにミサイル防衛も同様です。
誰も疑問を口にしませんが、今回のような北鮮のロケット発射で決まって空自の地対空ミサイル部隊が、公表された飛行ルート直下に当たる南西諸島方面に展開しますが、これは裏を返せば通常状態では迎撃できないということになります。
有事、戦争となれば奇襲が前提です。地対空ミサイルを輸送艦に積んで事前に展開する時間の猶予など全くありません。奇襲は予想もしない場所に、不意に一撃を与え、その一撃で大きな破壊をもたらすことが大前提です。
軍事オタクは、日本のミサイル防衛は世界屈指、中には世界一などと讃える者まで出てきています。筆者はそれを否定しませんが、世界レベルにあることは事実であっても、ギリシア神話の「アイギス」ではないということもオタクさんたちは一般の人に伝えるべきです。
ちなみに、防衛省(市ヶ谷)に地対空ミサイルが展開していますが、あれは防衛省と官邸用でしかありません。PAC-3の射程は20km程度ですので、市ヶ谷から20kmの円の外側の都民の皆さんは残念ですが…諦めてください。
浅瀬に徒波とは、思慮の浅い人間ほど、おしゃべりで些細な事で騒ぎ立てるということです。オタクさんや、残念ながら今の政権の座にある方も同じレベルという残念な現実があるのです。しかし、その残念な結末は我々の生命と財産で贖われるのです。
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:12/03/08:35
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