元自衛官の憂い The third
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09191533 | 不安な歴史的転換点 |
安全保障関連法が成立しました。
これにより、これまでの憲法解釈では認められていなかった集団的自衛権の行使が可能となります。
歴史的転換となるのですが、国会での与野党の議論は、全く不毛な議論に終始し、野党の動きは次の選挙対策としか映りませんでした。
世論調査では、約8割が説明不足だと見ていたのが、視点のずれた議論であった証拠です。
与野党の議論の中で、「隊員のリスク」について議論されていました。
どのような美辞麗句を使おうとも、隊員のリスクは高まるのは事実です。
質問したのは民主党の岡田さんだっと思いますが、自衛官の任務は常にリスクを抱えており、〝リスク〟を質すのであれば、日本国(国民)が集団的自衛権を行使するしないかで、そのリスクを質すべきだったのではないでしょうか。
今回の論争の発端となった「集団的自衛権」についてですが、これは国際的に集団的自衛権の解釈がいろいろ存在するためです。一定の解釈が存在していないこともあります。
安倍政権はそれを理解しておらず、そこから説明すべきものを端折ってしまったから、国民にとって全く理解できないものになってしまいました。
それを理解せず、「集団的自衛権」は国連憲章で認められているなどと言ったところで、国民が理解するはずもありません。
日本は軍事アレルギー国家ですから、学校では「軍事」について教えませんし、個人レベルで学ぶことになりますが、左右両派とも思想信条(心情)が大きく影響しますので、わかり難い事柄が余計にわからなくなります。
政府与党は憲法9条が存在することから、「教えない」「話さない」をこれまでの美徳とし、左派は「学ばない」「否定する」というスタンスができ上り、どちらからも疑問すら上がりませんでした。
ですから、政治家も国民と変わらない理解レベルなのですから、その程度の理解度で政治家が議論を重ねても中身の無い議論になるのは当然なのです。
それを聞かされる国民は「説明不足」だと感じるのもまた当然の結果なのです。
日本は戦後70年の間、平和だったのかというと、そうとも言い切れない事態が何度かあったことすら忘れたのか、表沙汰にされていないのかわかりませんが、一部の人間にしか知られていません。
筆者が知るだけでも、ベレンコ中尉亡命事件、韓国の北朝鮮潜水艦座礁事件、北朝鮮による日本人拉致、北朝鮮工作船からの工作員上陸、オウム真理教地下鉄サリンテロ等、もっとさかのぼれば敗戦直後の日本共産党と在日朝鮮人・中国人によるテロの頻発等危機的状況が数多くあったのです。
イラクへの自衛隊派遣もまた、その実情が国民には伝えられないままです。
日本人の国民性として、争い事を嫌う傾向が強くあります。
国際的な世論調査機関が行った「自国のために戦う意思」を質問したところ、日本人は世界最低の11%が意思があると回答。意思はないと回答したのは43%でした。
戦いたくないのは理解できますが、争い事を嫌う国民性以上に、無責任な思考が広まっているような懸念があります。そのような状況下にある国で、突然「集団的自衛権」を持ち出しても理解されないは当然の結果です。
国民だけではありません。
自衛隊が初の海外へ送られる可能性が高まったとき、予算をまとめていると、遺体収納袋を計上したら官僚に叱られたと聞いています。
予算をまとめていたのは制服組ですが、それを見た背広組の防衛官僚は「安全なところに行くのに必要ない!」と言い切られたそうです。
その程度の国が、性急に集団的自衛権行使など訴えていいのか、訴えるだけならまだ許されますが、それを実行しようとしているのですから恐ろしい限りです。
集団的自衛権行使を訴える元高級幹部が多くいますが、現場に出されるのは3佐から2尉の若手幹部です。部内幹部であれば、相応の経験を積んでおり冷静な判断も可能かもしれませんが、大学出だとしたら25、26歳の若者が極限状態での判断を迫られるのです。難しいのは誰にでもわかります。いかなる状況下でも的確な判断を下すまで、経験を積み重ねなければなりません。
OBとして心配なのは、判断が的確にできるか。その判断で犠牲が出た場合、国はどう判断を下した指揮官を守るのか、犠牲になった隊員、その家族をどう補償するのか等問題が山ほどあるのです。
筆者には、与野党の素人のバッチを付けただけの「議員」が論じた法案など、通していいはずがないとしか言えません。まだ日本には早すぎる!
中国の脅威に対抗するというのであれば、ここまで問題を放置してきた自民党に責任があり、それをまず国民に説明すべきです。そして、そこから様々な対抗策を考えていくべきです。
今の状態では、土留めをせず基礎を作り、そこに建物を建てようと日曜大工しているとしか映っていません。大けがの元です。
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