元自衛官の憂い The third
![]() (08/07)
(08/01)
(07/29)
(07/20)
(07/12) |
|
07231702 | [PR] |
09261033 | デマと法律と常識 |
堤防決壊で様々な情報が飛び交っていますが、原発事故後の“イソジンを薄めて飲みましょう!”と同じような都市伝説のような話題が飛び交うのは困ったものです。
流言飛語は危険な状況に陥ると飛び交うことは理解できますが、20世紀半ばなら理解できなくもありませんが、21世紀の世の中で根も葉もない話が飛び交うのは如何なものでしょうか。
関東大震災では有名な流言飛語で犠牲者が出たと伝えられていますが、正確な記録が残されておらず、混乱状態だったので記録が無いと言うべきかもしれません。
ネット上では匿名性が保たれるので、新しい時代であるにもかかわらず、21世紀に前時代的な流言飛語が飛び交うのは、口伝えで広まる流言飛語以上に拡散が速いかもしれません。
ツイートで“陸上自衛隊が要救助者に抱えられた犬を救助しました。ルール違反ですが意外と隊員は融通が利きます”と投降があったそうです。現在は削除されているそうですが、ネット上では「そんなルールがあるのか?」と広まり、現役自衛官の妻なる人物が、「ルール違反ではないんです。ただ救助の優先順位が変わってしまうのです」と反論され、“ルール違反”と投降した人物は、「身内が自衛隊法のエキスパート」とし「自衛隊の任務はあくまでも『生存する国民の救助』」だと返答しましたが、ルール違反を論じる意図はなかったようで後に削除されたそうです。
何がどうでもいいことなのですが、自衛隊法、自衛隊法施行令、同施行規則の中には救助する順位を決めたものは見つかりませんでした。筆者の記憶の中にも、そうした取り決めはありませんでした。あるとすれば、何らかの内規だと思います。震災後、迅速な対応のために見直しされているはずですから、内規の可能性が高いと思います。
余談ですが、ペットは法的には「物」として扱われています。状況によって、動物もピックアップするかどうかは、降下員による判断に委ねられると思います。ペットはダメということはないですが、状況によって違うことは充分考えられます。
ただ、被災された方のことを思えば、降下員は可能な限りペットもピックアップするように努力すると思います。
現在、筆者は仕事が途切れて休んでいますので、テレビ中継を見続けていましたが、NHKは素晴らしかったの一言に尽きます。
午前中の早い時間から現地の状況を伝え、決壊後からは内容は現場の状況と、要救助者に対する励ましの言葉と、救助を待つ間の行動などをずっと訴えていました。
民放はと、たまにチャンネルを変えると通常放送ばかりでした。
でも、元関係者として見ていて頼もしく感じました。
陸自のヘリによるピックアップばかりでしたが、まず、ヘリのパイロットの腕が超一流でした。地上寄りの近いところには電線や電話線が張り巡らされており、降下員の安全確保が困難であり、かなりの技術が必要とされます。
本来は、ホイスト(救助用ウィンチ)にスリング(救命浮環)を装着し、要救助者を収容するものでしたが、要救助者が自力で浮環を手にできない場合や体を通せない状況もあることから、降下員が降下し要救助者を確保するようになったことか、降下員が必要になっています。
でも、陸自には専門職の降下員はいないはずです(筆者の知る限りですが)。専門職として降下して救助に当たるのは海空自のみです。
救助に当たった隊員は、素早い身のこなしと的確な判断、迅速な対応と降下救助員の鑑といえるほどでした。
空自の場合、救難隊のUH-60は操縦士(パイロット:機長)、副操縦士(コパイロット)、機上整備員(フライトエンジニア:FE)、救難員(メディック)×2が乗り組んでいます。
要救助者の上空に着くと、FEの誘導で可能な限りヘリは接近します。救助のポジションに誘導し、FEはホイストを操作し救難員を降ろします。
パイロットとFEと救難員の息が合わなければ救助はできませんし、強い信頼関係も必要です。海自でも同様です。
それが陸自で行われていたのですから、驚くのも当然です。
降下員が判断して犬をピックアップできると判断したのですから、法もルールも関係ありません。
「法律」が優先される国ですが、「法律」とは人を守ることが「法律」が存在する意義です。
最も優先されるのは要救助者の依頼であり、次に優先されるのは降下員の判断です。
要救助者の命が守れること、要救助者の可能な限りの物を守ることが大切ではないでしょうか。法律やルールなど、危急存亡の状態では無意味です。
- +TRACKBACK URL+