元自衛官の憂い The third
軍事的色眼鏡で見る世界
軍人は究極の合理主義者です。
合理主義者であるが上に、「人道」を忘れたり、犠牲にしたりすることがあります。
軍人は行動は計画的、本心を隠す、混雑する場所を避ける、計画的な金銭感覚、意志が固い、職場での信頼を得やすい、そして最後に家庭では扱いがぞんざいにされるです。
家庭ではぞんざいに扱われながらも、軍事的色眼鏡で見てしまう元自衛官の雑感などを書いていきます。
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07260857 | [PR] |
08161216 | 台風 |
個人的に「台風」というと思い浮かぶのは、米空軍の“タイフーン・チャイサーズ”です。
アメリカには、空軍のタイフーン・チェイサーズ、海軍のタイフーン・トラッカーズなどがあります。熱帯低気圧に航空機で飛び込んで、気象状態の情報を収集します。
今は米空軍、米海軍、海洋大気庁などで航空機、船舶を使って観測する「ハリケーン・ハンターズ」が編成されているようです。C−130の尾翼に、青帯で“Hurricane Hunters”と描かれています。日本人の思考回路では思いもつかない観測方法です。
台風(熱帯低気圧)の観測には、気象衛星の登場は革命的な予報が可能になりました。しかし、気象衛星では気圧、風速が観測できないためハリケーン・ハンターズの観測は予報に貴重なデータをもたらしてくれます。観測機は熱帯低気圧が形成される兆候を察知すると、その現場に向かいます。中心部の気象データを収集し、発達、進路予測に役立てられます。
YouTubeで検索すると映像が見られますので、一度ご覧になってください。機体の揺れ、コクピットでは警報が次々と鳴り、その過酷さがうかがい知れます。
飛行は高度300mから3000mの間でハリケーンの中心に直線で向かいます。勢力の最も強い発達した積乱雲の箇所へと向かいます。そして、裏に回ると270度反転して再度中心へと向かうのです。これを4回繰り返します。俗に言われる“台風の目”を割り出すのです。平均飛行時間は11時間といわれ、この内6時間はハリケーン内部の飛行となるそうです。6時間は揺られ続けるというわけです。
歴史は1930年代にまで遡ることができます。一人の軍人の提案で米海洋大気庁が支援して「ストーム・パトロール・ビル」と名付けられ1936年に正式に認可(法案が可決)されました。
実際にハリケーンに飛び込んで、その観測の有効性が証明されたのは第二次世界大戦中の1943年だと記録されています。アメリカで訓練を受けていたイギリス人パイロットたちと米航空軍のパイロットたちの賭けが始まりだったそうです。
ハリケーンの接近で練習機を退避させようとしていたアメリカ人パイロットたちに、訓練を受けていたイギリス軍パイロットが練習機の欠陥などあげつらっているのを見た米航空軍主任教官が、みずから練習機を操縦してハリケーンに突っ込み無事帰還したことから、2度目には気象担当士官が同乗し観測に有効だとわかりました。
日本も無縁ではありません。最も有名なものでは、1974年の台風23号(多摩川の水害をもたらしました)の観測にフィリピンから観測中に行方不明となり、機体は発見されていません。これは、事故の少ないハリケーン・ハンター任務の中でも珍しいものであり、使用されたWC−130唯一の墜落となりました。
台風で災害救助というのが、自衛隊を含めた軍隊の役目だと認識されていますが、こうした命がけで観測に当たる軍人たちがいることを覚えておいてください。
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