元自衛官の憂い The third
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07291142 | [PR] |
06071110 | 安全保障の方針転換 |
太平洋戦争の敗戦から、日本は「平和が常態化」したような錯覚を抱く人、敗戦直後に現れた左翼思想家たちの扇動に乗った人たちにより、軍事を否定することが平和を招致しているかのような錯誤を生んでしまいました。
平和が状態化した時間が長くなると、今度は現実から大きく乖離した理想論が実しやかに口にされるようになりました。
日本のこうしたいわゆる平和ボケは、左翼運動家だけにとどまらず、政治家、政権政党にまで広まっている最悪な状態です。
筆者は集団的自衛権行使は必要なことと認識しています。だからといって、安倍政権が着手した集団的自衛権には反対です。その理由は簡単です。米国をただただ信じ込み盲従することは平和ボケです。
米国を信じ込める理由は何か、誰か説明できる人はいるでしょうか?
今回の安全保障法制の転換は、純粋な「集団的自衛権」行使というものではなく、米国に追従するのを目的にした法改正というのが事実です。
1990年、クウェートに侵攻したイラクに米軍を主力とする多国籍軍が編制されイラク攻撃が行われました。米国は日本に自衛隊を派遣しなかったことを、「血も汗も流さない国」とあからさまに批判しました。しかし、この戦争は米国の中東での軍事優先政策の破綻の始まりとなりました。
湾岸戦争後もサウジに米軍が駐留を続け、親米派であったウサーマ・ビン・ラーディンはこれを理由に怒り反米闘争に立ち上がらせました。そして、9.11テロ、その報復としてのアフガン、イラクへと米国は戦争の火蓋を切ります。米国の戦争政策は失敗の連続で、多額の軍事費は米国財政を圧迫しました。
落ちぶれたとはいえ世界の警察官たる米国はもがいています。これまでは中東情勢が懸念事項でしたが、中国の台頭と覇権主義、北朝鮮の核・ミサイル開発、台湾海峡から東シナ海、南シナ海、インド洋、中東と紛争の火種が増え、広大な地域に米国の軍事的プレゼンスをどう展開するかということでした。
そこで目を付けたのが、日本の自衛隊を米軍の補完部隊とすることでした。空自航空総隊司令部の横田移転は、その典型例です。
主権国家の象徴である「軍隊」が、同盟国と連携強化を名目に。揉み手しながら同盟国の駐留する基地に移転すなど〝異常事態〟です。
そこへ、「沖縄の基地負担軽減」が日本国内で語られるようになり、日本本土への米軍部隊の移動は容易になりました。更なる自衛隊の補完部隊として強化可能という状態です。米国は日本本土を、好きにできることになったのです。通常の同盟関係では考えられないことですが、この国の政治家は軍事オンチな上に、少し脅かせば〝かしこまりました〟と言うだけですから扱いに困るようなことはありません。事実、戦後レジームの脱却を謳い文句にした総理大臣は、戦後レジームに逆走しています。
米陸軍第1軍団が横田に移駐しますが、第1軍団は環太平洋地域を担当します。日本や朝鮮半島だけではないのです。それが、わざわざ日本に移駐してくるなど、この事実から導き出される答えは、「自衛隊の米軍補完部隊化」となります。
言い換えれば、自衛隊の米軍下請けの準備は進んでいましたが、その法的根拠が決まっていなかっただけなのです。
米軍の再編が始まったのは2005年からです。当時の総理大臣は小泉純一郎から安倍晋三へとバトンが渡された時期と重なります。下請けの契約は小泉純一郎が済ませものの、安倍晋三は煮えきらず、福田・麻生、そして民主党政権となり下請け契約どころか、日米関係はどっちらけ状態を迎えます。
政権の座に返り咲いた安倍晋三は、下請けを拒否したかのように振る舞い米国は完全に突き放しました。それが、返り咲いて訪米した安倍晋三に対する米国の冷遇でした。それが、今回の歓待ぶりは異常なほどでしたが、下請け契約にサインしたと考えれば納得できます。
同盟国として一衣帯水であることは認めます。しかし、軍事行動に関しては別です。
なぜなら、「戦争」の概念を考えれば一目瞭然です。戦争とは、軍事力を用いて政治目的を達成しようとするものであり、自衛や利益の確保を目的に武力を行使し、戦闘状態になることです。
自国の利益、つまり「国益」ですが、国益は国によって様々であり、まったく次元の違うものです。闇雲に同盟を理由に相手国に付き従う理由は主権国家ではありません。今回の安全保障法制の改正は、主権国家としての尊厳を捨てることです。アメリカ合衆国の自治州に成り下がるかどうかなのです。
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