元自衛官の憂い The third
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01230950 | 日本は昔から平和ボケだった〈北方領土は返されない〉 |
我が親友氏、北方領土が返される・返されなければならないと日本政府は国民を騙していると怒り心頭です。事実ですが、日本人の多くは返さないソ連・ロシアが〝悪い〟と思い込んでいます。
何回かに分けて北方四島が返されない理由をお話します。
昭和20(1945)年8月15日正午(GMT:8月15日午前3時)、昭和天皇の読み上げた「大東亜戦争終結の詔書」が放送されました。内容は国民と陸海軍に対しポツダム宣言の受諾と軍の降伏が決まったことを伝えるものでした。
同日、大本営は陸海軍に対し「別命あるまで各々現任務を続行すべし」と命令を発し、翌16日には「自衛のための戦闘行動以外の戦闘行動停止」を命じました。18日には「全面的戦闘行動の停止は別に指定する日時以降に行う」ように命令。19日第一総軍、第二総軍、航空総軍に対し22日零時以降、全面的に戦闘行動を停止するよう命令。
ここで一度整理します。
第一総軍とは陸軍の本土決戦部隊で鈴鹿山系から東の本州の防衛を担当。
第二総軍とは同じく本土決戦部隊で鈴鹿山系から西の本州・四国・九州の防衛を担当。
航空総軍とは陸軍航空部隊を統一指揮するために編制された本土決戦部隊。
昭和20年8月19日に出された命令は、本土に所在する部隊への停戦命令だったのです。
支那派遣軍を除く南方軍等の外地軍に対し、8月22日に25日零時以降に全面的な戦闘行動停止を命令。中国大陸や北方戦線では、ソ連と中華民国との戦闘が継続しており、ソ連は北方四島に上陸作戦を展開、それを阻止するための戦闘が続いていました。
8月15日は「終戦」ではなく、ポツダム宣言受諾を日本国民と帝国陸海軍に公表した日なのです。
日本人の常識は北海道の北に位置する歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島を巡って、日本とソ連(ロシア)の間で争われてきた北方領土問題は、8月15日終戦後に行われた不当・不法な戦闘行為により奪われたと認識しています。
しかし、前述したとおり8月15日はポツダム宣言受諾を国民と陸海軍に周知するもので、軍に対し「死して虜囚(りょしゅう)の辱(はずかし)めを受けず」と徹底された陸海軍将兵に武器を置き、武装解除に応じるよう天皇(大元帥)からの命令という意味合いから発せられたものだったのです。
戦争は休戦・停戦、降伏文書に調印された段階で戦争が終結します。戦闘(戦争)状態が完全に終結したのは、昭和20年9月2日東京湾で行われた降伏文書調印式ということなります。日本人が理解する8月15日から9月2日までの間、「空白の18日間」ではなく、れっきとした戦闘(戦争)状態にあったのです。
ソ連軍は8月16日、当時の日本領であった南樺太に侵攻しました。同地に駐屯する日本軍は自衛戦闘を敢行。頑強な抵抗を見せ激戦が繰り広げられましたが、18日日本軍は降伏します。しかし、小規模な戦闘は続いており、日本軍はソ連軍に対し強く抵抗。樺太の戦闘が完全に終結しソ連軍が占領を完了したのは8月25日のことでした。
18日から始まった千島列島東端の占守(しゅむしゅ)島にソ連軍が侵攻。ここでも激戦が展開され、ソ連軍は完全に足止めされました。占守島の戦いは機会があればお話します。占守島の戦闘が終了したのは8月21日、千島列島南端の得撫(うるっぷ)島の占領を終えたのは8月31日のことでした。
占守島の戦闘でソ連軍の千島列島南下作戦に重大な狂いが生じ、最終的な戦略目標であった北海道占領を完全に諦めさせることに繋がりました。
スターリンは千島列島侵攻を命じ、8月28日択捉島、9月1日国後島、色丹島に上陸。9月2日歯舞群島侵攻を命じ、9月5日占領に成功。これで千島列島全域をソ連は占領しました。
ここで重要な点は、北方四島がソ連に無抵抗であったということです。
国際法、軍事的観点から言えば、ソ連軍の攻撃に抵抗しなかったことは『戦闘放棄』であり、日本が降伏文書に調印した9月2日までの間に起きた戦闘はは合法な戦闘行動であったのです。9月2日までの間、日本軍は自衛戦闘を行う権利があったものを放棄したと解されるのです。
だとすれば、ソ連の千島列島侵攻作戦で違法なのは歯舞群島への侵攻だけなのです。
これは重要な事です。戦闘放棄と見なされる日本の行為は、国際常識に照らし、北方領土返還を求める日本の主張を裏付けるものとはならないのです。戦闘を放棄し無血占領を許したのですから、完全に日本軍は歯舞群島を除く択捉、国後、色丹はソ連に軍事占領されたと解釈することができます。違法性は全くありません。
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