元自衛官の憂い The third
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05251825 | 本末転倒 |
目的を実現するために「手段」を選択しますが、その手段を実行することが目的になってしまうことがあります。
例えば「社員旅行」など本末転倒になっています。社員旅行とは、社員同士のコミュニケーションが目的であり、モチベーション向上が目的です。
現在の日本は本末転倒が散在しています。筆者が気になるのは、先の戦争を「善」「悪」で区別しようとしていことです。
かつては、「悪」だという意見が多数を占めていましたが、昨今の保守ブームにより「善」だったという意見が目立っています。
しかし、最も大切なのは「なぜ戦争になったのか」と「なぜ戦争に負けたのか」を分析することです。これを分析し理解しなければ、同じ過ちを繰り返すことになります。東日本大震災もそうですが、数々の救助・救援に活躍した様々な場の人たちの活動が賞賛されましたが、その裏にあったはずの「失敗」は表に出てきません。
その「失敗」が明らかにされなければ、次の大規模震災で役に立つ手立ては減ることになります。
第二次世界大戦での日本は「満州国建国」「国際連盟脱退」から、日本は世界から孤立してしまい「日中戦争」の激化により、世界は中国の支援に回り、日中戦争での日本は世界を相手に戦っていた真実は見えてきません。中国を支援していたのは、「アメリカ」「イギリス」「ソ連」「ドイツ」などでした。日本は中国大陸を舞台に、世界と戦っていたのですが、そうした認識は当事者である日本には全く無かったのです。
対米開戦にしても、国力の差は歴然としており、勝てる可能性はゼロだったにもかかわらず戦争に踏み切ったのはなぜなのか?
満州国に関して言えば、日本は日露戦争でロシアから得た中国大陸の権益から中国大陸に進出。ロシアの「南下政策を阻止」するために、ロシアの最前線と日本は捉えていました。そして、「経済的利益」から満州国を建国させました。
世界経済は第一世界大戦の終結後、好景気に沸き立っていました。1920年代になると「恐慌」が始まり、1929年にはアメリカでの株価大暴落を機に世界は経済的に暗黒時代に入ります。日本の経済政策の一つとして、中国大陸進出、つまり「満州」進出を選んだのです。
安全保障と経済政策から満州に進出したのは、帝国主義時代の選択肢としは正しいものです。満州国の建国に中華民国は当然、不満で国際連盟に訴え出ました。
こうして派遣されたのがイギリスのリットン伯爵を団長とする国際連盟日支紛争調査委員会より出された調査団でした。リットン調査団は、紛争可決に向けた提言をしています。
○満州には、中国の主権下に自治政府を樹立する。この自治政権は国際連盟が派遣する外国人顧問の下、充分な行政権を持つものとする。
○満州は非武装地帯とし、国際連盟の助言を受けた特別警察機構が治安の維持を担う。
○日中両国は「不可侵条約」「通商条約」を結ぶ。ソ連がこれに参加を求めるのであれば、別途三国条約を締結する。
要約すると、「満州国は承認できない」「中国主権下の自治政府樹立」「日本の特殊権益を認める」というもので、日中双方に気を配ったものでした。
ここで注目すべきは、日本にも考慮すべきものがあったのですが、日本は敢えて「孤立」を決断しました。そして、中国大陸で日中戦争という名の世界を相手にする代理戦争に走ったのです。
冷静に見れば、日本はソ連の脅威をアメリカ・イギリスと協力して対処できた可能性があったのです。そして、国家存亡の危機に直面することはなかったのです。
なぜこうしたことが起きてしまったのか。
日本は満州国の建国の目的を見失い、満州国建国で手段が目的化してしまったのです。安全保障上の理由で建国させた国を日本は、爆弾に変えてしまったのです。
安倍晋三は、「日本国民の安全を守る」と声高に訴えます。本当に防衛政策の変更、憲法改正で日本が安全になるのであれば、何でも変えていくことは否定しません。
しかし、昨今の安倍晋三の動きを見ていると、かつての満州問題のように手段と目的を取り違えているように見えます。それは、中国の批判に明確な反論ができない状態からもわかります。
そして、最も怖いのは、目的を明確にしないで前に進んでおり、国民に理解されていないだけでなく、世界からも「?」が付されたままでいることです。
集団的自衛権はアメリカのご機嫌取り、米軍のお先棒担ぎではありません。わかりやすく例えれば、集団的自衛権はご近所付き合いであり、災害救援と同じものです。
世界から信用を得るか、それとも再び孤立する道を歩むのか。それが今、一人の政治家の肩にかかっているのです。その政治家が本末転倒のような有様では安穏としていられません。
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