元自衛官の憂い The third
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07051351 | 罠にはまったジャパーン! |
6月9日、中国海軍フリゲート艦が尖閣諸島周辺の接続水域を通航したと大騒ぎになりました。
「ロシア海軍艦艇」が複数通航したにも関わらず、ロシア政府には一切の抗議をしていません。しかし、「中国軍艦」が1隻通航しただけで夜中に大使を呼びだして猛抗議するとは常軌を逸しています。単なるクレーマー状態です。
前回、接続水域は「公海」扱いとなることはお話ししました。
国際法の観点から、領海で問題が生じるのは、外国軍艦が他国の領海内を通過する際に、領海国に対して軍事的脅威を与える行動や何らかの軍事行動を疑わせるような行動があった場合のみです。
平成16(2004)年11月10日、中国海軍原潜が石垣島周辺海域を領海侵犯しましたが、これは潜航して領海を通過したために「領海侵犯」となりました。
浮上航行し旗国の標識を掲げていれば、何ら問題にはなりませんでした。
潜水艦は潜航して作戦行動を行うため、潜航状態で航行すれば作戦行動と見なされます。潜水艦を撃沈まではしないでも、相応の軍事行動を伴う対応をしてもよかったのです。
私が「罠にはまった」というのは、今回の抗議で南シナ海での米中間のバランスを崩壊させかねない事態を招く可能性があるのです。
日本政府がロシアに一切の抗議をせず、中国には異常といえる抗議をしたのか。その理由は、「日中間には尖閣諸島の領有権紛争があり、日本政府は中国軍艦の接続水域の通航一切を認めていない」という姿勢から中国政府に抗議したと説明ができます。
安倍政権は昨年5月の閣議決定で、「無害通航権の行使とは認め難い外国艦船に対しては、原則として海上警備行動を発令する」と決定しています。今年に入って、中国政府に対し「尖閣諸島周辺の日本領海に中国軍艦が侵入した場合、海上警備行動を発令して海自艦艇を派遣する」との閣議決定を伝達しました。
どこにも「接続水域」という言葉は出てきません。それと、「尖閣諸島周辺の日本領海に中国軍艦が侵入した場合、海上警備行動を発令して海自艦艇を派遣する」とは、航行自由原則が認められている領海に中国軍艦が入った場合、日本の軍艦を差し向けるとは憲法で禁じられている「武力による威嚇」に該当する疑いがあります。
「武力による威嚇」とは、武力行使に至らないまでも、武力を背景に自国の要求を容れなければ武力を行使するとの態度を示して相手国を強要することです。該当すると思いませんか?
ここから私が中国共産党の幹部だったら…を想像してお話します。
南シナ海で「航行自由原則」の制限を主張している我々(中国政府)は、日本政府が同じ主張していることに着目し、南シナ海での我々の主張が正しく、認められるよう世界中に喧伝します。アメリカ政府には、東シナ海で日本政府が行っている自国防衛のために「航行自由の原則」を制限しているのと同じことをしていると主張します。
アメリカ政府による航行の自由作戦は、中国に対し脅威を与えており、航行の自由作戦をやめるよう主張します。
今回の日本政府による抗議は、アメリカ政府の南シナ海での行動を中国政府により制限される可能性と、尖閣諸島でアメリカ政府が積極的に関われない状態を生んだ可能性さえあるのです。
もっとも恥ずべきは、領海・接続水域についてもっとも理解していなければならない現在の自衛隊のトップである統幕長(海自)が「万が一、(中国海軍艦艇)が領海に入った場合はそれ相応の対応をする」と語ったことです。
国際法で認められていない行動をすると言ったところで、何ができるの?といった話になります。今回の日本政府/自衛隊/日本のメディアの動きは尋常でないばかりか完全に中国政府の罠にはまったと見るべきです。
情ないこと。この上もありません。
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