元自衛官の憂い The third
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08011643 | [PR] |
01111705 | 誤解では済まされません |
水陸両用作戦をこなす部隊として、陸上自衛隊に「水陸機動団」を編成するそうです。
一部の人は、尖閣諸島奪還のためアメリカ海兵隊のような強襲揚陸部隊であるかのような解釈をしています。「日本版アメリカ海兵隊」という表現が、こうした事実を物語っています。
自衛隊が海兵隊機能を持つ部隊を持つのは賛成です。
東日本大震災でアメリカ海兵隊が、その能力を見せ付けてくれました。
発災当時、日本で先鋒部隊として活動する沖縄の第31海兵遠征隊は、東南アジアに出動中でした。
アメリカ海兵隊の高い能力を目の当たりにした日本の政治家・防衛省関係者の口から、自衛隊に海兵隊能力を持つ部隊を創設すると言い出すのは当然のことだと思われました。
日本政府・防衛省(庁)は、自衛隊に水陸両用戦能力を持つ部隊を創設しませんでしたし、水陸両用戦を考えることさえ認められませんでした。
常識的な軍事に対する知識があれば、島国である我が国に、水陸両用戦能力のある部隊は不可欠なことがわかります。
その部隊は、自衛隊ではなく米海軍第7艦隊と米海兵隊に担わせていました。
研究すら為されていない部隊を創設するのですから、政府(防衛省)・自衛隊、メディアも含めて理解されていないのは当然ですが、それにしてもひどすぎる誤解をしています。
水陸両用戦能力とは、「海上から、陸上部隊が海上・航空から陸地に送り込み、各種作戦行動を行い、陸上での作戦実施中には陸上移動部隊に対し上空や沖合い海上からの支援攻撃や補給活動を行うことが可能」であるということです。
海上から陸海空部隊が統合された高い軍事能力を持つ部隊です。
米海兵隊の場合、独自の航空部隊を持ち単独で航空作戦も可能です。
米海兵隊の場合、戦闘攻撃機・攻撃ヘリ・各種輸送ヘリ・ティルトローター機、大型輸送機、電子戦機、空中給油機まで持っています。
米海兵隊の場合、作戦行動の際に海軍や空軍にお伺いを立てるなどという面倒なことは不要であり、米海兵隊単独で作戦行動がいつでも可能です。
今でこそ、世界一の機動性を誇る部隊ですが、第二次世界大戦が勃発するまでの米海兵隊は組織としての存在価値が問われ続け、議会からは海兵隊の維持経費を「無駄な経費」と罵倒されるほどでした。海兵隊を解体し、海軍や陸軍に吸収させる案も何度となく出されました。
そうした経験を経て、今の米海兵隊が存在するわけですが、陸自に海兵隊機能を持たせるというだけで、島嶼奪還のために役に立つというのは次元の違う話です。
米海兵隊と言えば、マリアナ諸島、硫黄島、沖縄の上陸作戦が浮かぶでしょうが、敵が待ち構える海岸線に強襲揚陸するのは、最も危険なのものですが、水陸両用戦の一部でしかありません。
米海兵隊は紛争地域からの米国市民の避難輸送、不時着した友軍機のパイロットの救出、そして災害救助及び人道支援任務も担っています。
冷戦終結後、様々な紛争に米海兵隊が投入されましたが、米海兵隊は砂漠、山岳地帯、市街地での戦闘で、私たちが想像する水上艦艇から水陸両用車による上陸作戦はほとんど見られません。
陸自の水陸機動団が、日本版米海兵隊というのは勘違いもはなはだしいものであり、尖閣諸島奪還のための部隊というのは誤解というよりも無知が生んだ錯覚です。
考えても見てください。無人島で、港湾も無ければ飛行場すら無い尖閣諸島が占領され奪還作戦を実行するのに強襲揚陸などまったく意味がありません。
米海兵隊と同じだと言うのであれば、各種航空機・各種戦闘車両を持たせ、海自にも独自の航空打撃力を持たせる必要があります。
そんなことなど、ちっぽけな小島を奪還するために必要なものとは思えません。
有効である部隊を創設するというのに、誤った解釈でそれを迎えようとするのは、後々、期待を裏切られたということになりかねません。
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