元自衛官の憂い The third
![]() (08/07)
(08/01)
(07/29)
(07/20)
(07/12) |
|
08282214 | [PR] |
03051017 | 金正男氏暗殺事件から見える現実 |
タブロイド紙でもないのに、北朝鮮金正恩朝鮮人民共和国元帥の異母兄である金正男氏暗殺にVXガスが使われ北鮮の関与が濃厚になっていることにだけ注目が集まっています。
なぜか北鮮が暗殺に使ったVXガスに注目しないのでしょうか?
北鮮の化学剤の備蓄量は2,500~5,000tだといわれています。少なくとも1,000t以上の備蓄があると見るべきです。
VXガスは神経剤に分類され、神経制御を不能にし全身痙攣、呼吸困難などにより殺傷します。致死率が非常に高く、症状の発現が極めて早いものです。
私は北鮮が暗殺に銃器による殺害ではなく、化学兵器を使用したのは、邪魔者である異母兄を殺害するのと、化学兵器保有をデモンストレーションしたのだと見ています。核兵器、弾道ミサイルだけではないと日米韓に強いメッセージを送ってきたのだと見ています。
裏を返せば、北鮮が招く有事には化学兵器を使用するとメッセージを送って来たのです。
もしかしたら、金正恩元帥はトランプ大統領の就任に強い危機感を持っているのかもしれません。独裁者であるが故に、ポピュリズムの大統領就任を警戒しているのかもしれません。
仮に金正恩殺害を目的にアメリカが軍事行動を起こした場合、迅速に対応しなければ北鮮が有利にはなりません。韓国内の米軍基地に有効な軍事行動が取れないよう攻撃を加えてくることでしょう。神経剤、今回使用されたVXガスは有効です。
北鮮の化学兵器開発は朝鮮戦争直後から始まりました。核兵器開発にも乗り出しましたが、核兵器開発は巨額の予算と高い技術が求められ、「貧者の核兵器」ともいわれる化学兵器開発に着手しました(生物兵器開発も行われているとみるべきでしょうが、今回は化学兵器についてだけお話します)。開発費に関しては、1㎢あたりの殺傷力では、生物/化学兵器は核兵器の800分の1だといわれます。
核兵器/化学・生物兵器(放射能兵器も含む)は「大量破壊兵器」とされていますが、核兵器こそが「大量破壊兵器」で、化学兵器・生物兵器は「大量殺傷兵器」と言えるものです。
核兵器は放射性物質の人体へ重大な影響を及ぼしますが、核兵器が爆発すると物理的な破壊が広範囲に広まります。しかし、化学・生物兵器は物理的破壊は全くなく動植物に広く強い影響を及ぼします。生物兵器が使用された場合には、有効な対策が講じられなければ長期間危険にさらされることになります。
今回の暗殺で私たち日本人は、マレーシアの視線で事件を捉えてはならないのです。マレーシアと北鮮の外交関係の悪化は避けられないでしょうが、第三者の視点で見ることは今以上の危険を日本に招くことになります。
この国の現実を見てください。冷戦時代以上に戦争が間近に迫っているというのに、右翼を気取る首相は何をしていますか? カネと支持団体擁護に汲々としているではありませんか。危機など全く実感していないのがわかります。これでいいのでしょうか?
- +TRACKBACK URL+