元自衛官の憂い The third
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07191227 | トルコ・クーデター失敗 ~トルコの闇~ |
親日国として有名なトルコではありますが、軍事的には様々な問題を放置されたままです。
トルコには陸海空の三軍、内務省隷下の憲兵隊(ジャンダルマ:Jandarma)、沿岸警備隊が存在しています。
三軍で約65万人の兵力で、憲兵隊・沿岸警備隊は戦時には、それぞれ陸海軍の指揮下に入ることになっています。
トルコ軍の特徴的なことは、平時には識見は大統領にありますが、戦時になると参謀総長に指揮権が移行されます。首相・国防相には軍への指揮・監督権はありません。
そして、トルコ軍は政治運動を行う軍隊という特徴があります。軍はいわば第四の権力となっていると見ていいでしょう。
トルコはイスラム圏では珍しい世俗主義を採っています。「世俗主義」とは、国家の政権・政策や立法機関が、特定の宗教権威・権力に支配、左右されないというスタイルです。
しかし、現在の大統領はイスラム主義色の濃い法律を制定させ、マスコミをコントロールしているといわれています。
建国の理念である世俗主義が脅かされていると軍が判断し、一部の幹部が行動を起こしたと見られます。軍の目的は、現大統領を退陣させることだったと思われます。
トルコでのクーデーターは珍しいことではありません。
確認はできませんが、クーデターの鎮圧に当たったのは内務省のジャンダルマと警察だと思われます。
治安維持組織のはずのジャンダルマですが、機関銃・迫撃砲・対戦車ロケット砲・装甲車を持つ重武装の組織です。現役20万人の兵力(予備役5万人)を持ち、志願制という極めて意志強固な組織です。
徴兵制の軍と志願制のジャンダルマが小競り合いとなれば、ジャンダルマが優位に立つのは当然です。
今回のクーデーターの失敗は、周到に準備されたものではありますが詰めが甘かったといえます。
まず、鉄則である現政権の指導者の身柄を拘束(もしくは殺害)しなかったことです。次に、鎮圧部隊となる部隊を動員可能なままにしたことが失敗の原因です。
クーデーター開始直後、エルドアン大統領は支持者に対し、クーデターに抵抗することを訴えました。
トルコではエルドアン大統領の指示の下、世俗系の学校の閉鎖。それまで通学していた生徒をイスラム系の学校への転校。アルコール禁止を増やし、キリスト教会があった場所、スカーフを禁止していた大学などでモスク建設を進めてきました。
大統領の呼びかけで街に集まった群衆の映像を見ましたが、ヒゲを伸ばした男性が多かったですね。ヒゲはいわばイスラム教徒であることの主張です。大統領支持者はイスラム色の濃いトルコを望んでいることがわかります。
エルドアン大統領就任後、クルド人との戦争により国内でクルド人によるテロが頻発。
エルドアン大統領はギュレン派が企んだクーデーターだとしていますが、元々はエルドアンとギュレンは同士的存在でしたが、エルドアンが大統領の座に就き、汚職等の疑惑が浮かび上がるとギュレンはエルドアンと距離を置くようになりました。
このように、今回のクーデターはまったく理解困難な理由で始められ失敗したのです。そして、同じ宗教色を持つギュレン派の責任にするというエルドアン大統領の見解も理解できません。
親日国ではありますが、政情は極めて不安定であり、現在の状況で旅行の目的地に加えるべきではありません。
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