元自衛官の憂い The third
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07270719 | [PR] |
04130958 | ウクライナ情勢 |
ニュースにならなくなったウクライナ情勢ですが、注目度が下がった今、敢えて取り上げてみたいと思います。
2013年11月ヤヌコーヴィチ政権が欧州連合との政治・貿易協定の調印を見送り、新欧米派、民族主義政党などの野党勢力による反政府運動が起こりました。
2014年1月、政府に対し抗議するグループの中に武力抵抗も辞さないという立場をとる集団が現れ、制圧しようとした政府治安部隊と衝突。双方に死者が出ました。
ヤヌコーヴィチが失踪し、最高議会は親露派政党などがヤヌーヴィチ解任と大統領選の繰り上げを決議。大統領代行と首相が新たに承認され新政権が発足しました。
ヤヌコーヴィチ政権の崩壊で、ロシア上院がクリミアへの軍事介入を承認。プーチン大統領はウクライナの極右民族主義勢力からクリミア半島内のロシア語話者、ロシア系住民を保護するとの名目で本格的な軍事介入に出ました。
ウクライナを挟みロシアと欧州が引っ張り合いをしているのは、ウクライナの潜在能力によりロシアがただの大国か、世界に冠たる大国になるほどの影響があるからです。
ニュースにもなったクリミア併合ですが、クリミア半島はソビエト社会主義連邦が、ウクライナへと移管されたものです。ソ連時代のスターリン体制下、当時のフルシチョフが辛酸を舐めさせられたウクライナ国民への〝プレゼント〟だったのです。
ソ連が崩壊すると、黒海艦隊の根拠地であるセヴァストーポリなど重要な軍事拠点が集中するクリミア半島がウクライナ領となり、このままではソ連(ロシア)海軍黒海艦隊どころか、黒海の制海権さえ失うことになります。
クリミア半島、大きな潜在能力を持つウクライナ、これらが欧州側の手に渡れば、ロシアの安全保障に深刻な影響を及ぼします。
こうした前提条件を理解せず、ウクライナ情勢を眺めていても理解はできません。
ウクライナの潜在能力は、日本の軍事オタクの間では有名だと思います。
自衛隊が海外派遣のたびに輸送を依頼するのが、ウクライナのアントノフ航空のAn-225でした。
ウクライナは1994年にEUとのパートナシップ・協力協定を結び、95年にはNATOとの間に平和のためのパートナシップ協定を結び西側との協力関係をスタートしました。
97年にはロシアとの間に距離を置こうとする国家(グルジア、アゼルバイジャン、モルドヴァ)との間でGUAM(民主主義と経済発展のための機構)を設立しました。
ソ連(ロシア)との間に距離を置こうとするウクライナですが、GUAMを設立した一方でロシアとの間で黒海艦隊の駐留を2017年まで認める協定を締結しました。
ウクライナは自らの潜在能力を理解し、敢えて二股膏薬をしていたわけですが、EUに付こうとすれば当然、ロシアの反発を受けることになります。
我が国のことではありませんが、地政学的な見地からも国の先行きを決めるべきです。
こうした裏の事情を理解せず、一方的に批判したり非難したりするのはあらぬ誤解を受けてしまいます。お勉強は必要だということです。
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