元自衛官の憂い The third
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01270709 | 国益を守るには裏切りもある |
日本ではそれほど大きく取り上げられていませんが、中東では大きな変化が起きています。この“変化”は歴史に刻まれるものであり、これまでの人類史の中でも一大転換でもあります。
それが、注目もされていませんし、気にも留めないでいることは怖いことです。
サウジとイランの国交断絶は、宗派対立という側面もありますが、両国関係の展開如何では中東で大規模な軍事衝突さえ考えられる事態です。
今月2日、「テロに関与した」としてシーア派指導者をさうアラビア政府が処刑しました。シーア派指導者は2011年、スンニ派国家サウジアラビアのシーア派差別撤廃を求める反政府デモを支持しました。これにより2012年6月に逮捕され、2014年10月「宗派間対立を煽った」として死刑判決を受けました。
この処刑により、イランにあるサウジ大使館をデモ隊が襲撃。イランの最高指導者はこの行為を批判し自制を求めるどころか、「サウジの政治家には間違いなく神の報復が降りかかる」とデモ隊の行為を正当化。サウジ政府は「イランとの国交を断絶する」と応酬。内戦状態にあるイエメンのイラン大使館をサウジが空爆したとイランが非難する事態となりました。
宗派対立が国家間の対立を招いたのですが、歴史的な動きはこの後でした。アメリカがサウジ・イランの対立の仲介者にならないと宣言したのです。アメリカ国務省の報道官は、「我々はこの問題の仲介者になろうとしているかと問われれば、答えはNOだ」と発言。
中東最大の親米国サウジアラビアに対し、“オラ知れね!”と三行半を突き付けたのです。
これだけではありません。サウジとイランがにらみ合っている状態の中、アメリカは「イラン制裁解除」が近い将来実行されると公表したのです。
現在の芸能界ではありませんが、浮気がバレて三行半が突き付けられて、そうかと思ったら浮気相手と結婚すると公表された浮気した夫を持つ「妻」のような心境に立たされたのがサウジアラビアです。
これまでなら、サウジとイランの衝突にアメリカは「イランを叩くチャンス!」とサウジを支持したことでしょう。浮気を否定し、奥さんにプレゼントを買うようなことが当然のように行われてきました。しかし、今回はこれまでとは全く真逆の動きです。
実はサウジアラビアは親米国家というだけで、中身は怖い国です。宗教警察が存在し、違反とされれば外国人であろうと問答無用で逮捕されます。男尊女卑国家であり、女性の自動車運転の禁止、公共の場でのベール・スカーフの義務化、結婚、就職、旅行には男性保護者の許可が必要など21世紀に不相応な国家です。
裁判ではアラビア語のみで、被告人がアラビア語を理解できなくても通訳なし。証人はアラビア語で証言しなければ、いかに証拠能力があっても認められないという徹底ぶりです。
このような『アラビアンナイト』のような国が、なぜ世界の批判をかわしてこれたのか…アメリカの庇護のお陰なのです。サウジを批判することは、アメリカに対し顔に泥を塗るようなことにもなり、世界中のどの国もサウジ批判をしてきませんでした。
ここに来て、アメリカはサウジに三行半を突き付けたわけですが、アメリカとサウジの関係は1974年にサウジの原油の見返りに、いかなる国からもサウジを守るとアメリカが約束したのが最初です。そして、原油取引にはドル決済ということが約束されました。
サウジアラビアは原油埋蔵量世界一というのが、このアメリカの支持がありました。あまり表沙汰になってはいませんが、アメリカの原油は2016年に枯渇するといわれていました。この予測が子ブッシュ大統領の侵略外交の理由だったのです。
イラク戦争は「大量破壊兵器」を理由にしましたが、それが“間違い”だったと後に明かされますが、イラク戦争の原因は原油利権だったのです。2007年に前FRB議長であったグリーンスパン氏の回顧録の中で暴露しています。
そこに「シェールガス革命」が起こります。今まで困難であったシェール(頁岩)層からの石油・天然ガスの抽出が可能になり世界のエネルギー事情が一変しました。余談ですが、シェールガス革命でアメリカでは原発依存から火力発電に戻っている実態が見られます。
アメリカは枯渇するはずの原油が、“我が国はエネルギー大国だ!”となりました。これは、中東の地域価値低下にも繋がりました。
その証拠に、オバマ大統領は戦略を中東からアジアにシフトすると宣言しています。
日本人にはなかなか理解できないでしょうが、外交は「国益」が優先されるのは当然で、日本も利用価値が無くなればアメリカに裏切られることも容易に行われるのです。「約束を守れ!」などと国際社会に訴えるのは間抜けなヤツのやることです。
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