元自衛官の憂い The third
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07271810 | [PR] |
01031716 | 明けましておめでとうございます。 |
2020年はオリンピック・イヤーですが、北朝鮮という名の火薬庫にいつ火が回るかわからない状態になっており、トランプ大統領の状況によっては武力行使の可能性も高まります。
中露は北朝鮮に強く出ず、北朝鮮を野放しにしているように見えます。しかし、かつての朝鮮戦争を見ればわかりますが、後ろ盾になっているはずの中ソの「忠告」に耳を貸さず、北朝鮮は国連軍(米軍)の反撃に遭い敗退するという失敗をおかしなが、未だにその気風は変わらないと思います。「言うだけ無駄」だとわかっていれば、余計なことは言わないのが賢い選択というものです。
朝鮮戦争勃発前、中国共産党は台湾を併合しようと軍事作戦の準備を進めていました。北朝鮮の指導者・金日成はモスクワを訪れスターリンに南侵許可を取り付けるべく説得にあたっていました。「(北朝鮮の攻撃で)南朝鮮の共産主義者たちが立ち上がり、ごく短期間で南朝鮮全土を制圧できる」と主張しました。
金日成の説得にスターリンは南侵の許可を与えますが、スターリンには思惑があったといわれます。あくまでも推測ですが、参考までに記述しておきます。
⑴朝鮮半島を共産主義化することにより、ソ連の安全保障に利用する→朝鮮半島を緩衝地帯にする。
⑵米ソ戦争(第三次世界大戦)に備え、日本攻撃の橋頭堡として朝鮮半島を利用する。
⑶朝鮮半島を支配下に置けば、緩衝地帯になり米中間のクサビとなる。
⑷米軍をヨーロッパから極東に移動させられる。
これは、あまり日本では注目されていませんが、歴史教育に採り入れるべきでしょう。スターリンが考えたことですから、プーチンや習近平も考えるはずです。
スターリンは金日成にソ連製の武器を大量に譲渡し、ソ連軍の軍事顧問団を送り作戦計画を練らせました。軍事顧問団の見積もりでは、進撃速度を1日15〜20㎞とし、1ヶ月で朝鮮半島南部を制圧できるとしていました。一方の中国は、台湾併合の準備に手間取り、1951年に延期されましたが中国本土と台湾の中間にある重要島嶼攻略は進めるとしました。
1950年6月25日、38度線を越えて進撃を始めた北朝鮮は3日でソウルを陥落させ、米韓軍を釜山に追い込むことに成功します。米韓軍は対馬に後退するしかない状況に陥ります。
しかし、朝鮮戦争は金日成にとって誤算続きの戦いでした。韓国国民の反応が無かった。ソ連軍の忠告を無視した。ソウル陥落後、急速な共産化を進めるため大規模な粛清を行い共産主義に対し恐怖心が広まったなどです。
韓国内の共産主義者が蜂起せず、釜山まで米韓軍を追い込みながら、ソ連軍は米海軍の動きを察知し水陸両用作戦が近いことを金日成に進言しますが、金日成はこれを無視しました。中国の毛沢東は、短期間で北朝鮮が戦争に勝利できないと予想し、中国共産党軍事委員会は中朝国境地帯の防衛準備を進めました。
金日成の誤算は米軍による本格介入でしょう。トルーマンは朝鮮半島で戦闘勃発の報告を受けると、ただちに米国連代表に安保理の緊急開催を求めます。6月27日には侵略戦争だとして北朝鮮を非難し、軍事行動の即時停止を求めました。そして、北朝鮮に対し武力行使を認めるよう決議を求めました。7月7日には、米軍司令官の指揮下国連軍を編成しました。トルーマンは中国を牽制するために、台湾海峡に米第7艦隊を急派します。これは、毛沢東の想定外の出来事でした。
毛沢東のショックは6月28日に行われた中央人民政府会議の発言で伺い知れます。
「アメリカによるアジア侵略はアジアの人民から広範で断固たる反発を受ける。トルーマンは声明で、米合衆国は台湾に介入しないと語った。しかし、トルーマンの行動は、この言葉が誤りだったことを証明している。さらにトルーマンは、中国の内政問題(台湾併合)に介入しないという約束に関わるすべての国際合意をずたずたにした。米国は、その資本主義的本性をあらわにした。米合衆国は朝鮮、フィリピン、ベトナムの内政に対するいかなる方法の介入も正当化できない。(中略)全国および全世界の人民よ、手を繋ぎ、米資本主義のいかなる挑発も阻止するべく万全の準備を整えよ」
トルーマン大統領の迅速な対応で、毛沢東は台湾併合の夢を打ち破られたのですから、その怒りは計り知れません。
朝鮮戦争にこのような背景があったとは、無関心な日本人には理解できないでしょう。しかし、北朝鮮が単独で核開発や弾道ミサイル開発を飛躍的に向上させられるはずはなく、今も北朝鮮の背後で蠢く国があることは容易に想像できます。
東アジア情勢に変化をもたらしたのは、実はトランプ大統領だということは日本ではあまり知られていません。
冷戦下、ソ連の脅威に対抗するためニクソン大統領が中国共産党政府を西側に引き込もうと1971年に訪中しました。79年には、中国共産党政府を「中国を代表する国家」と承認。ここに台湾との国交が無くなりました。中国がここから台頭していきます。アメリカは「台湾関係法」を制定し、有償武器援助の道を残し台湾との関係を維持しようとします。しかし、国際的に中国を優遇し、アメリカに続き世界は中国と国交を結んでいきます。台湾は孤立を深めていきます。
トランプ大統領が就任すると、台湾たの関係強化を図ります。当選から1ヶ月で台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、直後には「国防授権法」を成立させ米台間の軍事交流を名文化。台湾海峡に米海軍艦艇を派遣するようになります。
2017年12月、トランプ政権初の「国家安全保障戦略」で中国を「戦略的競争相手」と名指しで批判し、1979年以来の米中関係のてんかんを打ち出しました。トランプ政権は台湾への武器供与を決めたことも公表されました。
米台間が接近し、米中間が緊迫化していますが、こうした状況に日本人の多くがまったく注目していません。
東日本大震災で台湾が手厚い支援をしてもらいましたが、日本では親日国台湾ばかりですが、台湾がこれからも親日国でい続けているかの保証は無いことに日本人の多くは気付いていません。
米中対立が激化したり、中国共産党が台湾併合などの暴挙にでる可能性もあり、日本人が考える「アメリカがなんとかしてくれる」だけで良いのでしょうか。台湾の存亡の危機に立たされた時、日本人はどうするのでしょうか。そんな未来が来ないことを願いますが、だれもそれを保証できません。2020年、どのような事が起きるのか…。考え出すと筆者は不安になるだけです。
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