元自衛官の憂い The third
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03262042 | 私どもは軍人ですから戦うことは当然のことです |
天皇、皇后両陛下は、先の大戦で激戦地となったペリリュー島の戦没者慰霊のためのご訪問を前に、ペリリュー島から生還した元陸軍軍曹と元海軍上等水兵を招き当時の様子を聞かれたそうです。
そこで、お二人が陛下のねぎらいのお言葉に、答えた元軍人の言葉「私どもは軍人ですから戦うことは当然のことです」。
個人的には“怒り”しかありません。怒りが先に立ち、文章になるかどうか心配です。
3月18日、北アフリカのチュニジアでテロ事件が起き、死傷者は約70名、日本人3名を含む6名の死者が出ました。ケガを負った女性の一人、結城法子3等陸佐(3佐)がいました。
休暇を利用し母親と旅行中にテロに遭いましたが、テロの被害にあったことは同情しますが、被害者である前に陸自の「士官」であるのです。
「自衛隊は軍隊ではない」とは、歴代自民党政府の国民への説明ですが、異常な解釈の我が国とは違い「士官」は国際的にも重い責任が課せられています。
3佐とは諸外国では少佐です。諸外国の場合、少佐に昇進するには特別な専門教育を受けなければなりません。能力が無ければ大尉止まりで除隊するというのが一般的です。一般企業では「副部長」、警察では「警視」に相当し小規模な警察署の署長です。中央官庁では本省の「課長補佐」クラスに相当します。
国連海洋法条約では、軍艦は士官の指揮下にあるのが大前提です。元首の代理と言われるのは、こうしたところからでしょう。ジュネーブ条約では、捕虜となっても士官は本人の志願が無い限り労働させられることはありません。
結城3佐は自衛隊中央病院(中病)に勤務する麻酔科医です。防衛医科大学校(防医大)を卒業。防衛医科大学校は6年間の教育訓練と全寮制で団体生活を通じ、医師としての知識や技能のほか、生命の尊厳への理解、あらゆる任務を遂行できる強靭な体力を養います。医師であり、かつ幹部自衛官としての重責を担っていける資質を備えた人材を求めます(防衛省の説明のママ)。
教育課程は「進学課程」「専門課程」「病院実習」「訓練課程」があります。「訓練課程」では幹部自衛官として必要な基礎的資質、技能を育成することを目的として、陸海空の各部隊で実習を受けます。医官は「医師である幹部自衛官」ですから、医師であると同時に部下を指揮・統率する立場にあります。いかなる状況下でも、精神的・肉体的に常に的確な判断をし、職務を遂行しなければなりません。痛みで一日中泣くことが、果たして彼女に許されることかどうかご本人には自覚が無いようです。
事件前後の自覚の無い対応で済めばいいのですが、ご丁寧にも「手記」まで出したのには救いようのなさを感じました。
手記を読んでみると、案の定の内容です。
「まさか発砲されるとは思わなかった」「とても現実のこととは思えなかった」「生きた心地がしなかった」など、戦場とは縁の無い日本人女性の典型的な表現です。でも、彼女は主権国家の象徴である「軍」の士官です。自衛隊は軍隊ではないとは、国民を騙してきた歴代自民党政府の説明ですが、3佐殿、まさか自衛隊は軍隊ではないから責任も権利も放棄されているのでしょうか。
「取材が過剰で不快だった」と一被害者そのものです。
自覚があれば〝銃声〟で反応していたでしょうし、近くにいた人の避難誘導もしたでしょう。ケガを負っても、医師である以上は近くの負傷者の応急手当もしたことでしょう。
手記の全文を読んでも、どこには陸自の士官である自覚のカケラすら見出せませんでした。おまけに、朝日新聞の記者を批判。病室の前で大声を出していたのを聞いてショックを受けたそうです。それに、テロと先頭で戦うべき立場の人が、テロを非難する内容も見当たりません。これはもう国辱です。軍事法廷があれば、軍法会議にかけられ不名誉除隊確実です。
こんな手記を何のため、誰のために書いたのかは憶測すらできませんが、他国の軍人が読めば自衛隊とは「弛緩した組織」と思うこと間違いなしです。敵意のある国の軍人は弱点を見つけたとほくそ笑むことでしょう。でも、国防に携わる一人である以前に、社会人としても問題があるかのように感じるのは私だけでしょうか。
メディアの取材を受けペラペラ喋り、後になって「何を話したのか覚えていない」では大人としていかがなものでしょうか。
これだけで終わらないのが今回の問題です。
海外渡航承認を受けておらず、無断渡航してテロに遭って無断渡航がバレてしまったのです。
無断渡航が意図的かそうでないかに限らず、自衛官という身分によって危険にさらされる国があります。かつて、承認を得た渡航でも、その国の空港で一時的でも身柄を拘束されたり、公務で渡航しても尾行されたりすることが頻繁にありました。
防衛省・所属長に一切の連絡が無いとも伝えられており、頭が良くて防医大に入り、医師免許を取得し、3佐となったサラリーマン士官と言ってしまえばそれまでですが、震災で勝ち取った国民の信頼を傷つけるものであり、被災地で活躍した全自衛官に対する背信行為です。
辻政信の「本当の敵は、強い相手では無く、無能な身内である」という言葉が浮かんできます。
90代になられるペリリュー島で生き残った元軍人の言葉ではありませんが、自覚を欠いた人間がいかに醜悪であるか証明してくれたのが今回の事件の唯一の結城3佐の教訓でしょう。
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