元自衛官の憂い The third
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03151043 | 陸自海兵隊機能とシビリアンコントロール |
陸自に海兵隊機能を持たせるのは大変けっこうなことです。
米海兵隊の能力は東日本大震災でいかんなく私たちに見せ付けてくれたので、陸自に海兵隊機能を持たせることを否定する人は少ないと思います。
でも、私は新藤兼人監督の言葉が浮かんできます。
「現実は厳しいから、自分に価値がなければ認めてもらえない」
東日本大震災直後、太平洋海兵隊司令部外交政策部長(G5)が語った言葉をご紹介します。
「米軍が他国の自然災害に対応する主な理由は、もっぱら人道的なものです。米軍には困っている人々を助けるための能力があります。もし、道端で誰かが傷つき倒れているのに気付いたとしましょう。自分にはその人を助けられるだけの能力や知識や必要な装備があるにもかかわらず、立ち止まって助けの手を差し伸べなかったとしたら、それはなんと思いやりの心に欠けていて恥ずべきことでしょうか」
陸自にそうした能力を与えることは、東日本大震災を経験した日本にとって当然の選択であることは言うまでもありません。
震災ではアメリカ軍四軍が「トモダチ作戦」に投入され、救援活動に従事してくれました。地上だけでなく、洋上には増援部隊が待機し、いつでも出動できる態勢をとっていました。
そんな中で、アメリカ海兵隊と特徴づけるものとして「水陸両用戦能力」と「緊急対応能力」を兼ね備えていることです。
日本には、海兵隊は存在しませんでした。
しかし、軍事的見地からは島嶼国家である日本にとって海兵隊は必要不可欠な存在だったのです。
「水陸両用戦能力」は洋上からの海空を使った大規模な人員・資機材の投入。日本にとって災害救援に有用な軍事力です。
海兵隊は待機する艦艇が大きく、居住空間が広く、被災者収容にも役立ち、医療施設も完備しています。
各種揚陸艇、水陸両用車、ヘリコプターを使い被災医者の救助、救助活動後の支援活動など様々な用途に利用することができます。
海兵隊能力を持たせれば〝すべてOK〟というわけではありません。「現実は厳しいから、自分に価値がなければ認めてもらえない」と新藤監督の言葉が通りのことが起きてしまします。
〝自分に価値がなければ認めてもらえない〟
海兵隊の能力の一つ、「緊急対応能力」です。
軍事作戦でも、災害救援でも成果は初動により大きく差が出ます。
「出動」までの意思決定のスピードが重要になります。
公表されている資料だけに限られますが、防衛省によると平成23年3月14日11時に自衛隊行動命令が発出されたと記録されています。
その中に、3月11日15時30分、大規模震災と指定し自衛隊に大規模震災災害派遣を実施する旨命令が出されたとしています。
でも、当時は一番早いもので11日18時という記録があるだけで、11日15時30分というものはどこにも見当たらないのです。
それも、11日15時30分に発出された命令が、なぜ14日になって公表されるという遅延が生じたいのでしょうか。
自衛隊の行動を制御する「シビリアン」が機能していなかった疑いが浮かびます。
シビリアンコントロール、文官統制などと悠長な話ばかりが先行する我が国ですが、最も即断しなければならない出動命令が、文民によりなされていなかったのではないでしょうか。
未曾有の災害、国家存亡の危機的災害などと言ってはいますが、実際には政治家も官僚も判断能力が作用せず、制服組の独断による判断で行われていたのではないでしょうか。
当時の民主党政権だから…と言ってしまえばそれまでですが、だとすれば国家危急の災害を前に、野党であった自民党は口をつぐんでいたのです。
つまり、日本のシビリアンには「能力」が無いということになります。
新藤監督の言葉を最後にご紹介します。
「私自身を例に挙げれば、シナリオを書き、映画を撮っていますが、私に何ら能力がなかったら世間は受け入れてくれません。現実は厳しいから、お前は年を取ってしまってもう駄目だけれど、仕方がないから認めてあげようなどということは絶対にない。価値がなければ認めてもらえないんです」
政治家や官僚は、国民を第一に考え何事にも制約されます。不倫チューなんて常識外です。
陸自に海兵隊機能を持たせても、出動を命令するまでに時間をかけているようでは、海兵隊機能などまったく無駄なことになるのです。
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