元自衛官の憂い The third
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06051028 | 敵地攻撃能力など無意味 |
3月のことでした。衆院安保委員会で稲田防衛相が敵地攻撃能力の保有を示唆しました。敵地攻撃能力を持つことは、抑止力が向上する、ミサイル防衛よりもコストが安くつくといった考えから導き出されたものです。
現実はと言うと、〝それはあり得ない〟ことです。
日本が仮に敵地攻撃能力を持ったとします。北朝鮮にその戦力が差し向けられるとしましょう。日本へのミサイル攻撃が予想され、日本は北朝鮮攻撃の検討に入ります。
当然、周辺国への事前報告、同盟国である米国の承認を求めなければならなくなります。
まず、韓国は日本の軍事行動を認めることはあり得ません。米国も同じで、日本が独自の軍事行動を押さえ込み、米国が代わって行動すると約束することでしょう。
事実、韓国は北朝鮮にゆるフリゲート艦撃沈事件や離島砲撃事件などで韓国の報復を許しませんでした。
韓国と米国が反対するのは、日本の軍事行動により北朝鮮が全面戦闘に乗り出す可能性が出てくるからです。
当然、日本の先制攻撃ですから、指導部はナショナリズムを高め、反撃の正当化、戦争の正当化を行います。日本では潜伏中の工作員、協力者がテロ活動、ミサイル攻撃も同時多発的に行うことも考えられます。これでは「藪蛇」です。
そもそも標的となる北朝鮮のミサイル発射機を捕捉することは不可能です。
日本が何らかの軍事行動を行おうとしていることは、事前に本国に報告されることでしょう。
敵基地攻撃能力は「巡航ミサイル」もしくは「空爆」となり、日本を飛び立ってから、実際に攻撃が実施されるのは発進から1~2時間後になることから、的確な位置情報等を得られても、1~2時間後もその場に留まっている保証はありません。
私事ですが、通勤に約2時間。距離にして60kmほどです。1時間では約30km移動していることになります。
北朝鮮は地下施設が充実しており、移動どころか地下施設に隠されることも考えられます。
地下施設に隠されれば、日本に攻撃手段は無くなります。
有名な話ですが、湾岸戦争やイラク戦争でスカッドミサイルハンティングが行われましたが、狩り出されたのは囮かミサイル発射機に似たトレーラーやタンクローリーで、成功の確率は約55%。仮に100発あれば、45発は無傷のままだったことになります。
平坦地(砂漠)の多いイラクに比べ、北朝鮮は山岳地帯が多く、北朝鮮の電子妨害能力は我々が想像する以上に高いレベルを誇っています。
彼らの電子妨害は、韓国のテレビ・ラジオ放送、日本のラジオ放送の遮断が目的で、周波数を特定し適正に妨害しなければならず、その能力は日本以上です。誘導のために空自戦闘機、巡航ミサイルはGPSをフル活用するでしょうが、GPSをも妨害する能力を北朝鮮が持っていることも十分考えられます。
問題だらけの敵地攻撃能力ですが、これだけではありません。ミサイル防衛以上のカネが必要になります。
①偵察能力向上のために偵察衛星・無人機等の増強
②電子妨害機の採用
③巡航ミサイルの導入
④偵察・電子妨害機護衛部隊の編制
⑤パイロット救出体制構築
これを実現させるのに、どれほどのカネが必要となるでしょうか。これでは、ミサイル防衛に専念すべきです。
やるべき事は山ほどあり、カネもかかりますし、時間も必要となります。であれば、何を優先すべきか迅速に答えを出さなければなりません。
国会議員のセンセイ方は票に繋がらないと、防衛問題を口にしないできた上に、全く学ぶことすらしないできました。それのツケが今払わされようとしています。
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