元自衛官の憂い The third
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09100310 | [PR] |
02210953 | 本土決戦 |
専守防衛などと言っていますが、実際は「本土決戦」そのものです。日本本土を舞台に敵軍を迎撃するというのは、かつての日本軍が思い描いた構図そのものです。
かつての陸軍と(陸上)自衛隊は隔世の感はありますが、戦略の本質的部分は全く変わっていないのです。
『産経新聞』の防衛最前線を読んでいましたが、「主砲は105ミリ施線砲(しせんほう)」と書かれているものに目が止まりました。16式機動戦闘車の解説のようですが、施線砲とはいったいどんなものなのか全くわかりません。
たぶん・・・ライフル砲のことを書きたかったのでしょう。であれば、施条(しじょう)もしくは腔線、腔施というべきです。ちなみに、施線砲は使われていません。右の主力紙がこの程度ですから泣けてきます。
個人的には16式戦闘車は好きです。異形の戦闘車両を好むためですが、だからといって16式戦闘車が自衛隊にどれほど役立つのかというのがはなはだ疑問です。
機動戦闘車が配備されれば、戦車は本州から消えてしまいます。これは、防衛省が計画している26中期防(中期防衛力整備計画)で戦車を300輌まで削減するとされており、この代替として機動戦闘車を配備し74式戦車は用途廃止、90式戦車は北部方面隊(北方)、10式は北方と西部方面隊(西方)に集中配備されます。
現在15個ある師団と旅団のうち大都市圏(政経中枢)を担当する部隊以外の7個師団と旅団が機動力を高めた即応機動部隊と改編されます。
16式機動戦闘車は陸自の目指す新たな戦略の目玉商品といえるものです。
現在、最も脅威となっているのが中国ですが、中国軍の戦車揚陸能力は50輌程度と見られています。冷戦時代のソ連軍でも日本にソ連機甲部隊を上陸させる能力はありませんでした。
上陸作戦では攻撃側は守備側が保有する3倍以上の戦力を集中させるのが鉄則といわれており、日本が戦車を持つ限り敵も戦車を上陸させなければならなくなります。攻撃側に大きな負担となります。
この負担を強いることが、「抑止力」と呼ばれるものです。北方と西方に戦車を集中させるのは戦略上間違いではありません。日本国内にバラバラに戦車を配備していても、有事となれば戦車戦力を集中できず無駄な存在となってしまいます。
陸自の機甲部隊が対処すべきは、戦車ではなく小規模なゲリラ戦闘などの非対称戦です。ゲリラ戦では迅速に目的地に駆け付ける機動力が重要なものとなります。
昨今、装輪式が大流行しています。装軌式と比べると軽量で機動性の高いのが装輪式車両です。
装輪式は機動性だけでなく乗車中の疲労も軽減され、良いことづくめのようですが、装輪式は車体重量を限定されるという欠点があります。装甲車両では車体重量が装甲厚と関係しており、車体重量が軽いものは装甲厚も当然薄いものとなります。
本土から戦車を無くすことは戦略上当然の選択かもしれませんが、敵がこちらの目論見通り本州に戦車戦力を投入しないとは限りません。ましてや、近代の歩兵には対戦車ミサイル、対戦車擲弾など装備しており、旧ソ連製のRPG-7から現在は進化したRPG-29が装備されています。ゲリラにとって、RPG-7は必須アイテムです。
RPG-29はイスラエルのメルカバを撃破したともいわれるほどの能力を持っています。能力的には陸自90式戦車を撃破可能と思われます。
私は陸自の描く本土決戦が、時代の変化についていけなくなっていると見ています。そして、自衛隊が本当に本土決戦を想定した武器を装備しているのかという疑問も浮かんできます。
16式機動戦闘車は、まさにこうした自衛隊の歪みから生み出されたあだ花となるのではないかと思えます。
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