忍者ブログ

元自衛官の憂い The third

軍事的色眼鏡で見る世界 軍人は究極の合理主義者です。 合理主義者であるが上に、「人道」を忘れたり、犠牲にしたりすることがあります。 軍人は行動は計画的、本心を隠す、混雑する場所を避ける、計画的な金銭感覚、意志が固い、職場での信頼を得やすい、そして最後に家庭では扱いがぞんざいにされるです。 家庭ではぞんざいに扱われながらも、軍事的色眼鏡で見てしまう元自衛官の雑感などを書いていきます。
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

07280540 [PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • :07/28/05:40

02071039 領空侵犯する中国軍機を撃墜すべきか

たまには難しい話をしないと…。

今回はニュースにもなる「領空侵犯措置」についてお話します。


拍手[1回]





自衛隊法第84条に領空侵犯に対する措置の規定があります。

防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法その他の法令に規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。とあります。

昨今、右派から問題視されているのは、「撃墜」できるか否かといった問題提起です。空自は領空侵犯機が意図的に領空を侵犯し、さらに敵対意図を持つのが明らかになったとき、空自機はこの航空機を撃墜できるのかというと残念ながら撃墜する法的根拠はありません。

「必要な措置」とは、自衛隊内・公表されているものでは、①侵犯機の確認、②侵犯機に対する領域外への退去又は最寄りの飛行場への着陸警告、③侵犯機を着陸させる飛行場への誘導、④警告、誘導に従わず、発砲等の実力をもって対抗するような場合、武器使用を含む対抗措置の実施。とされています。撃墜できないだけでなく、侵犯機が発砲しない限り領空侵犯機を撃墜することはできません。

昨今、中国軍機に対する緊急発進の回数が激増したと話題になっていますが、自衛隊の歴史を顧みるとMiG-25亡命事件とソ連Tu-16バジャー偵察機沖縄横断事件が発生しています。

昭和621987)年129日、沖縄本島上空及び沖永良部島・徳之島上空をソ連軍機が領空侵犯し、自衛隊史上初のF-4EJによる実弾警告射撃が行われました。

「警告射撃」なのに、なぜ大袈裟に扱われるのか疑問を感じる方も少なくないでしょう。警察官が容疑者に対し、拳銃による威嚇射撃をすることがあります。危害射撃を行い、警察は正当性を丁寧に主張しますが、警察官は国内法に基づき、違法行為を行う容疑者に対し威嚇し、従わず警察官等に危害が及ぶと思われた際に射撃を行います。しかし、戦闘機が射撃は即、国際問題になり「戦争」の口実に利用されることも考えられ、発砲の重大性は次元が違うものなのです。

129

10:30頃 宮古島のレーダーサイトが4機の国籍不明機を確認。(後に偵察機×2、爆撃機×2の編

隊と確認される)

10:45頃 空自那覇基地第302飛行隊所属F-4EJ戦闘機に緊急発進が命じられ、後続してさらに

4機が離陸。レーダーサイトは無線により英語・ロシア語により日本領空接近を警告。

    

緊急発進を命じられた戦闘機は2機編隊で行動します。1機は目視可能郷里まで接近し、もう1機は僚機が攻撃されないように後方の高い位置で飛行します。緊急発進した空自戦闘機は、正当防衛、緊急避難でしか射撃はできません。

緊急発進したF-4EJから無線により警告を実施。国際民間航空機関(ICAO)の第二議定書に従い、緊急発進した機は対象機と領空の間に位置し、斜め前方で翼を振り「要撃された」ことを伝えます。これにより、要撃する戦闘機の指示に従い行動することになります。

11:10頃 3機は宮古島南方を通過し北上。

11:20頃 1機のTu-16が北に変針し沖縄本島に接近。編隊長は「警告射撃実施」の許可を要請。

空自は航空総隊隷下に北部、中部、西部の航空方面隊と南西航空混成団があり、射撃等一切の判断は各司令官の判断に委ねられています。那覇基地の第302飛行隊は南混団隷下にあり、その判断は南混団司令官に委ねられているのです。

司令官は射撃の許可、許可されたのは領空に入る直前でした。

11:24 ソ連軍機日本領空に侵入。

F-4EJが即、警告射撃できたかといえば、そうではありませんでした。戦闘機等が射撃を実施すれば、弾は当然、重力に従い下に落ちます。下方の安全が確認されない限り、F-4EJは射撃するタイミングを待たなければならないのです。

ソ連軍機は那覇基地、嘉手納基地、普天間基地、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン上空を飛行。米軍は何をしていたか…というと、一切の無線交信を中止していました。無線周波数を探知されないためです。

ソ連軍機が洋上に出たことが確認され、警告射撃が実施されました。

11:31 ソ連軍機領空外へ。

このままソ連軍機は太平洋を北上すればいいものを、約10分後に沖永良部島と徳之島の間で領空侵犯し、警告射撃が実施されました。

領空侵犯したソ連軍機はその後、北朝鮮の平壌に着陸したと発表。後に日本側も確認。ソ連は悪天候と計器故障が理由であったと説明。パイロットを降格処分にしたと公表しました。ソ連側が非を認め遺憾の意を表したことで、外交上は「一件落着」となりました。

当然、浅薄な右派から「なぜ、撃墜しなかったのか」と声が上がりました。

このときのソ連軍機による領空侵犯は、筆者の私見ですが弛緩したソ連軍パイロットのモラルが生んだ冒険行為だったと思われます。あからさまな米軍基地上空の飛行で明らかなように、相手(空自/自衛隊/日本)は敵対行動を取らないとわかっていたのです。

一方で話題になる中国軍機よる領空侵犯ですが、中国軍機の場合はモラルの問題ではなく、パイロットの功名心による危険行為がほとんどです。国(共産党)に賞賛される行為をすれば、軍人として箔が付きます。キャリアにプラスとなり、こぞって危険な行為を繰り返します。

ソ連軍のような「お遊び」とは違い、バックには危険行為を黙認どころか推奨する「国」が控えているのです。

右派の意見が通り、領空侵犯されたら即撃墜するようになれば、相手は戦端を開く絶好の機会を与えることになります。さらに、侵犯機の所属する部隊の司令官が功名心にはやり、国(共産党)の指示を待たず限定的な軍事行動を起こすことすら考えられます。

撃墜することは簡単です。しかし、事態が悪化することも考えられ、安直な「撃墜」ではなく事態が悪化しないメカニズムを構築できるよう粘り強く交渉を重ねることが第一だと筆者は考えています。

PR

+コメントの投稿+

+NAME+
+TITLE+
+FONT+
+MAIL+
+URL+
+COMMENT+
+PASS+
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

+TRACK BACK+

+TRACKBACK URL+